eスポーツ団体 独占取材

【後編】JHSEFはeスポーツをしたい高校生達にとって味方となるように

11月1日、『一般社団法人 全国高等学校eスポーツ連盟 』(略称:JHSEF ジェセフ)が始動しました。

「eスポーツを全国の教育現場に」全国高等学校eスポーツ連盟【JHSEF】が発足!北米教育eスポーツ連盟と活動連携

全国高校eスポーツ選手権を開催し取り組みを進めている(株)毎日新聞社と ...

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元文科省のスポーツ・青少年局長であった久保公人理事長を筆頭に、毎日新聞社とサードウェーブが中心になって立ち上げた社団法人。連盟の動きとしては、まず高校生のeスポーツ活動の裾野を広げ、全国的な展開を押し進めていくと打ち出しています。

株式会社サードウェーブ 取締役副社長榎本一郎(えのもと いちろう)氏へのインタビュー【後編】は、社団法人設立の経緯や、『高校生のeスポーツにどのような変化が期待できるのか』伺いました。

『文化』にしていくためのハードルに気づいた

ーー社団法人 全国高等学校eスポーツ連盟について聞かせてください。

榎本氏
これも一連の流れに繋がってくるのですが、『高校の一大イベントを毎日新聞社さんと一緒に作る』、『参加してくれる学校のために部活支援を創設する』、『環境を整えていく』、結果『文化にしていく』なかで、ハードルがいっぱいあることに気がつきました

「実はこういうことを毎日さんとやるんです」と、関係省庁やIOCの関連を回ったんです。

皆さん、個人的には"オール賛同"なんですよ。でも「所詮スポーツじゃないよね」「今、世間で困っているのは子供じゃない」とか、「榎本さんがやりたいと思ってることは正しい。しかし、正しい事と受け入れられることは別の話だ」って。民間企業がいくら文化だ高校生の為だって言ったって、そういう風に取らない人がほぼ大多数なんだと痛感しました。

「榎本さんが、例えば社団の冠を持っていて、公機の顔で同じ話をしたらイエスって言える人もいっぱいいると思うよ」というお話もありました。

当社の役員会でも同様の話題が上がってきていて、「高校生のための社団を創設するか」という話になりました。そこから、せっかく大会も組ませていただいているし、今までも社団活動されている毎日新聞社さんへ相談に行きました。

毎日新聞社さんと進めるにあたって、誰を社団に迎えるか悩みました。理念をちゃんと理解してくれて社団の活動としての正らしさを推進してくれる方を‥ということで毎日新聞さんの推薦もあり、文科省出身の久保先生に、理事長に就任いただきました。

JHSEF記者会見

スポーツかスポーツじゃないかは問題じゃない。新しい文化にしなくちゃいけない。

榎本氏
今一番色々な人に訴えたいのは、「これは正しいですか、正しくないですか」という議論はしたいと思っているんです。

絶対誰に言われても曲げないのは、「正しいことをやっている」と思っているからなんですね。毎日新聞さんと組んでいる、あるいは自社で取り組んでいるeスポーツ文化は、こうあるべきというのは正しいことだと思っているんですよ。そうでなければ絶対やらないから。それは会社全体としてもそう。儲かるだけだったらやらないし、そういう会社です、サードウェーブは。私自身もそうです(笑)。

正しいか正しくないかでいうと絶対正しい。

なんでそんなにeスポーツをやるんですか?って聞かれたら、1点、明確答えを持っています。

野球、サッカー、バスケット、バレー、水泳、陸上‥と、色々競技がありますよね。そして、eスポーツがある。全部でいくつあるのかわからないけど、仮に30種類の中で競技選択しているとする。

「どれやろうかな、あるいはどれとどれをやろうかなー」って悩む環境が海外にはある。でも日本だけ、その30マイナス1だったら、ネガティブでしかないと思ってるんですよ。

要は、仮にeスポーツを認めないっていう風になったします。その時、海外で認められているものを日本は認めないという形になったら、(選択肢が)マイナス1じゃないですか。プラス1ではなく欠けるわけです。それって、"opportunity loss"(機会損失)なんですね。若い人たちが、あったらできたのに、できないことになる。

いま世界の若年層の人たちが、何を持ってコミュニティを作っているか、友だちを作ってるか、楽しみを見出してるかというなかに、eスポーツがかなり大きなファクターを持ってるんですね。ある調査では、eスポーツのプレイ人口は1億3000万人以上で、野球より多いんです。

野球をやることよりもeスポーツをやって友だちを作ってる人たちが多くいるんですよ。この現実を無視して日本はダメよと言ったらこの"opportunity"を失くすことになるんです。

今までは良かったかもしれないけど、これからの若い人に対しては、今後新しい世代が育つときにひとつ可能性を失うんですよね。大袈裟に言うと、eスポーツがあったら、もしかしたら充実した何かを得られたかもしれない人生を奪うことになるんですよ。だから、eスポーツがあることは絶対に正しいと思ってる。

興味のない人に興味を示せと言ってるのではなくて、地盤を整えた後選ぶ選ばないはもちろん自由です。
でも「あって選ばない」のと、「無くて選べない」のでは意味が違うと。そういう環境を日本の大人が作っちゃダメだと思ってるんですよ。それを、一民間企業がどんなに熱く語っても認めてもらえないんだったら、社団の活動に組み込んでもらって、選択肢が一つ増えることは絶対に良いことだという理念と信念を持って活動していきたいと思っています。

社団法人がないとせっかく正しいことを言っても、あるいは協力してくれる人が沢山いたとしても、何かのところで認められないことがあるんだとすれば、社団の力を借りてでも正しいことは正しいと言いたい。

サードウェーブ社の受付にはゲーミングPCブランド『GALLERIA』アンバサダー、ケインコスギさんのパネルスタンドが。

高校生達にとっても武器になる味方。先生にとっても援護となるように。

ーー社団法人が設立されたことによって、高校生にとってどんなメリットがあるのか、教えて頂けますか?

榎本氏
高校生たちが、eスポーツ部を作りたいと思って先生にお願いする事があるでしょう。そういった時、先生はeスポーツは健全なものとして生徒たちに対応しやすくなると思っています。

eスポーツはまだまだ誤解や偏見が多いですが、それを払拭する情報を社団からどんどん発信して社団からどんどん発信していきます。そういうお墨付きがあれば、先生も生徒達が熱い思いでぶつかってきた時に、「eスポーツ確かにこういう部分がいいよね」「でもこういうのは守らないとダメよ」とかそういうのをしっかりと言えるような、高校生にとって武器になる味方。先生にとっても、校長先生や教育委員会に創部の意思を伝えるとき援護になるような社団であったら、今仮に悩んでいる人達がいるとすると、多分プラスに働きかけるかと。

ーーeスポーツ部をやりたい、部活を立ち上げたいなと思っている高校生達の後押しになる存在になるということですね。

榎本氏
そう、後押しになるような。「だって社団できたじゃない」って高校生たちが言ってくれてもいいし。だから逆に言うと社団の責任は重くて、高校の先生達や学校に向けてどういうエビデンスを出していけるかとか、何をサポートできるかっていうのを、小さいことからでもどんどん作っていかなきゃいけないだろうなと思ってます。

ーー裏付けを欲しがるといいますか、誰かに太鼓判を教えてもらえないと進めないという体制もあるのかなと思いますね。

榎本氏
やはり先生方にはとても重い責任があるわけじゃないですか。高校生達を預かっていて、どういう風に導いていこうかっていう時に、先生たちが考えるマイナスになっちゃいけないんですよね。

だからそれも簡単なことではないけど、その責任を少しでも軽くしてあげられれば。正々堂々と高校生たちに対しても「こうやったら良いよ」と言ってあげられるようなそういうエビデンスがどんどん高校向けに出来上がっていくと、先生は取り組みやすくなっていきますよね。

あと、先生自身もeスポーツに対してわからないこと沢山あるじゃないですか。

「こういうのを生徒に聞かれたけど、どう答えたら良いの?」みたいなことも含めて、社団に相談頂けたら、それをきっかけに「生徒に向けて何か発信する場合はこういう風に応えてあげたほうが良いね」とかやり取りができるようになったらいいと思っています。

今回社団に【医学会】が入っています。朝本理事は"呼気分析"の権威なんですね。吐いた息で脳の作用がどうなっているのかというのを調べる機械があるんです。もともと脳外科の先生なので、研究していらっしゃる。

当社がスポンサードしているプロeスポーツチーム"ラスカルジェスター"に対してもトライアルで検査してもらったことがあるんです。練習する前と後でプロになると興奮状態の高まり方が変わるんだよね。通常はゲームを行う前はアドレナリンが高くて、やった後は落ち着く‥んですけど、プロはそれと逆の結果がでました。プロは練習前が緊張状態なんだよね。

ーー違いが出るものなんですね!興味深いです。

榎本氏:
先生曰く、やはり検体は多いほうがいいと。どんどんデータを集めたいと仰っていました。仮設は色々あるけど、検証するのは数字じゃないといけない。

今学校でeスポーツの活動してくれている高校生たちも、ある意味eスポーツ文化の先駆者じゃないですか。同士なんですよ、我々からみると。この業界を後輩につなげていくためにこういうのは協力してねと依頼したいと思っています。呼気分析にしても、いろんなヒアリングにしても、未来に繋がることであればお願いしたいですね。

ーー部活にしても設立したら終わりというわけでは無いですし、下の世代にもどんどん継承していくためのインフラを作れていけたらいいですよね。

榎本氏
視点としては2つあって。学術的にといいますか、文化にするために得ていきたいデータ、あるいは必要な知見の蓄積に協力をしてもらいたいということと、eスポーツ部環境を整えていくためにアンケートとヒアリングは協力してもらいたい。

それは見方によっては商売に思われてしまうかもしれないけど、ちょっと違うんですよね、環境を整えるために必要なアンケートっていうのは。聞かせてほしいんです。「あと何が必要なのか」「どういうものがあったら良いのか」「自宅で使いたいですか?」とか。

または「サポートしてほしいこと」。「LoLを教えてほしい」だったら、どういう内容を教わりたいのか。そういったことを含めてカリキュラムで組みたいものとか聞かせてほしい。部活支援モデルに先生の目安箱を用意したいくらい。

まずはeスポーツの裾野を広げる。2年間で2000校の加盟を目指して

ーー社団として、2年間で2000校を目指されているんですよね。まずは裾野を広げることに注力をされるということで。

榎本氏
ステップとして、来年の7月までに500校くらいは参加してもらう大会であったり社団であったりという形になりたいと思っています。その1年後には2000校になっているように。まあ言うのは勝手ですからね(笑)。

そもそもeスポーツそのものが陸上競技に近いんですよね。タイトルによってぜんぜん違うから。100M走が得意な人と、槍投げが得意な人と全然違うじゃないですか。練習も、中身も、適正も。

eスポーツって選ぶタイトルによって槍投げと100M走くらい違うことがあるので、eスポーツというくくりの中でタイトル選びが重要だと思っています。社団の理念に賛同してくれて、一旦利益や利害関係を捨てて、どう高校生達が取り組みやすいか、高校の文化にするには何が必要なのかっていうのをタイトルホルダーの方も一緒になって考えてくれるとありがたいなと。そのために2000校が必要だと思っているんですよ。

プラットフォームがここだとすると、大事なのは高校生だったり、教育現場の人達なんですよ。だからサードウェーブでも毎日新聞でもないし、IPホルダーのものでもないんです。高校生がeスポーツで自己実現するための可能性の場をどう整えるかで、それにどう賛同してくれるかっていうのがすごく大事なんですね。

学校には学校の教育理念があるし、その理念とeスポーツの理念をぶつけた時に何が一番最適かという答えのひとつがPCのeスポーツだから、まずそれを広めましょうと。

あと、2000校になっても社団の地方支部が立ち上がると予選もしやすくなるし、数もこなせるようになってるんです。

実は今大会での採用タイトルが2タイトル(ロケットリーグ、リーグ・オブ・レジェンド)となっている一つの理由が、オンライン予選会をオンラインといえど審判を用意してやってることにあるんですよね。消化できる数が限られてるんですよ。

1人で2試合を見て、30人審判団を用意して、人件費をかけてやっている。参加している高校同士、勝手にオンラインで試合してもらってるわけじゃないんです。

ーー全試合をきちんと人が監視しているんですね!

榎本氏
インチキやサーバーダウンが無いか、事故がないか見てるんですよ。それが高校生大会のあるべき形だと一旦定義したんですね。勝手に高校同士決まった組み合わせでいつまでに試合やって報告してっていうのも、大会ぽくないじゃないですか。

運営を考えると、仮に2000校になった時には予選がどうあるべきで、どう地域の人に関わってもらっていて、社団の地方支部へは何をデリケーションして何をお願いしなければいけないっていうのも考えていかなければいけない。

ーー「2000校になる」と仰られていますもんね。これから社団としてもどんどん動かれていくという、本当にスタート地点ということなんですね。

榎本氏
社団じゃなきゃできなかったことを社団でやります。

ーー一層スピード感を増してeスポーツ文化が拡大していきそうで、お話を聞いているとワクワクしてきます。

榎本氏
そうですね、一瞬苦労が増えそうだけど(笑)、だれかが力強く漕ぎ出したら動くものですよ。

ーーありがとうございました。

「eスポーツを文化にして」、「そのエコシステムの一員になる」というビジョンに向かって、高校生のeスポーツシーンを牽引していく榎本氏。その確固たる意思に突き動かされるように、企業、団体、個人が次々と化学反応を起こしていく未来が見えてくるようです。

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